7月消費者物価は日銀の想定通り、追加緩和期待の市場とギャップ

8月 29th, 2014

7月の消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)は、消費税を除いて前年比1.3%上昇となり、日銀の想定通りの結果となった。

市 場では4─6月期の経済成長率の大幅下落を受け、日銀が追加緩和に踏み切るとの期待が再燃しつつあるが、日銀は物価が想定通りであれば成長率が多少下振れ ても政策の現状維持を続ける構え。足元の物価水準から目標の2%までは距離があるものの、しばらく日銀は強気の姿勢を堅持する公算が大きい。

<プラス幅縮小一服、14年度物価目標射程内>

消費税を除いた指数は、4月に前年比1.5%上昇した後、5月1.4%、6月1.3%と上昇率が縮小したが、7月は6月と横ばいとなりプラス幅の縮小が一服した。

日銀は2013年4月の量的・質的緩和(QQE)開始来、2年で2%の目標達成を掲げているが、2014年度のコアCPI見通しは1.3%で、現時点では達成が射程内にある。

日銀は14年度後半からプラス幅が再拡大するとしてきたが、プラス幅の縮小が小幅にとどまりつつあることで、再浮上の時期がずれ込んでも14年度見通しの1.3%は達成できる計算だ。

た だ、日銀も当初から手放しで楽観していたわけではない。今年6月からの携帯電話の料金改定や、持ち家の計算上の家賃である帰属家賃などが指数を押し下げる 可能性を注視すべきとの声もあった。黒田東彦総裁は7月の定例会見で「プラス幅が縮小しても1%割れはない」と強調したのも、実際に上昇幅の縮小が起きて も、市場が過剰に反応しないための伏線だったという見方も出ている。

だが、ふたを開けてみれば、携帯電話料金は上昇幅を縮小(5月3%、6月1.1%、7月0.2%)しつつも上昇が継続。帰属家賃は5月以降マイナス0.3%と小幅な下落が続いているが、大きな指数の下押し要因とはなっていない。

<雇用・所得改善による物価上昇シナリオ堅持か>

成長の下振れリスクが意識されているにもかかわらず、日銀が強気の物価見通しを維持している背景には、改善基調が続く雇用・所得環境がある。

29日に公表された7月完全失業率は3.8%と6月から小幅上昇したが、その要因は職探しが増えたためとみられている。有効求人倍率も1.10倍と1992年以来の高水準にある。

今年の春闘では久しぶりにベースアップ(ベア)の動きが広がり、6月毎月勤労統計調査では、所定内給与が前年比0.3%増と2年3カ月ぶりのプラスに転じたほか、ボーナスなど特別給与も同2.0%増となった。

日銀内では今後、人手不足など需給ひっ迫がさらに強まっていくとの見方もあり、完全失業率が構造的失業率に近づく中、雇用の改善が賃金増につながりやすい環境になっているとみている。

雇用・所得の改善継続が需給ギャップの縮小とインフレ期待を高め、物価上昇圧力が一段と強まっていくとの見立てだ。

7月家計調査において実質消費支出が5.9%と大幅に減少するなど、4月の消費税率引き上げに伴う反動減からの回復は鈍いが、日銀では雇用・所得環境の改善が続く中で、個人消費は基調として底堅さを持続するとみている。

日銀は円高や経済指標の下振れのたびに、政府・市場の追加緩和圧力にさらされてきた。

だが、今の状況は、過去の追加緩和圧力にさらされてきた状況とは、様子が違っている。黒田日銀は、実体経済と物価を切り分ける姿勢を明確にし、物価のトレンドと期待インフレ率がともに堅調さを維持していれば、追加緩和しないスタンスだ。

他方、市場は従来型の緩和期待を持ち続けている面がある。この先、市場の期待と日銀の見方に大きなギャップが生じる可能性がある。